そうでない方のおじさん

甥っ子から貰った2×2×2のルービックキューブ

おさがりのルービックキューブ

小学生がもう簡単に出来てしまっていらなくなったルービックキューブ

 

 娘のおもちゃ箱に乱雑に転がっていたそれは、甥っ子に貰ってから一度も日の目を浴びたことはなかった。去年の年末に甥っ子がさまざまなルービックキューブを祖父母の家に持ってきていて、私の目の前で自慢げにころころと完成させていった。立方体ではない形や、パーツが独立しているタイプ、オーソドックスな3×3×3、4×4×4もあった。アンミカのルービックキューブを見たときは「特需~!」と思った。私もころころ適当に回してみるが、全然合わない。一番簡単そうな2×2×2は一面だけはかろうじて合わせることができるが、そのあとが全く続かない。6面は無理ではないか!?と思う。

 

 にこにこの甥っ子に「あげよっか」と言われて大人げなく「ほしい!」と無邪気に答え、家に持って帰ってきたはいいものの。難しくていつも10分もたたずに娘のおもちゃ箱に放り投げる。それをまた2歳娘がひっぱり出す。そして気が付くと、ルービックキューブはぬいぐるみが座る椅子と化していた。

 

 一昨日、唐突に完成させたくなった。「椅子と化してる姿が不憫に思えてきたから」というのは表向きの理由で、本当の理由は「甥っ子にダサいと思われたくない」からだ。次に会う時までにできるようになっていたい。インターネットで検索をする。手順通り段階を踏んでいく作業と、あらかじめ決められた回し方のパターンを暗記する。意外にそのパターンは少ない。これは動かし方を覚えてないと完成しない。逆に言うとパターンさえ覚えてしまえば誰でも完成させることができる。繰り返しころころ回していくと、そのうちお手本を見なくても完成させることができるようになった。嬉しくて何度も崩して何度も完成させる。完成させるたびに嫁に見せる。愛想笑いをされる。別にいい。これは甥っ子に見せるための努力だ。君には関係がないから。崩して、ころころ転がしてまた見せる。また、愛想笑いをされる。鼻で笑われながら私は「今までできなかったことができるようになって嬉しくなる」という気持ちを、しばらく忘れてしまっていたなと思った。

 

 おじさんには、急になるものではない。経験を重ねて徐々におじさんとなっていく。いつも新しい挑戦をしているおじさんとそうでないおじさん。あきらかに後者である私が、2×2×2のルービックキューブ(おそらくマクドナルドのハッピーセットのおまけ)を通じて、こんな快感を味わえる日がくるなんて思わなかった。今、アマゾンのカートには3×3×3のルービックキューブが待機している。やろうとしない限り一生できない。

 

2024年5月29日